歯ぎしりや食いしばりは、ご本人が気づきにくい癖です。上下の歯は本来、1日のうち10〜12分程度しか触れていないとされています。放っておくと、歯のひびや根の破折、詰め物・被せ物が外れる・割れるといったトラブルのほか、あごの痛みや肩こり・頭痛の要因になることもあります。当院で行う確認の流れ、保険診療で作製するナイトガード、日中の食いしばりに気づくための工夫もあわせてご紹介します。文京区・春日駅・後楽園駅の歯医者、後楽園春日たなべ歯科が解説します。
「朝起きると、あごや顔まわりが疲れている」
「治療した歯が、また欠けてしまった」
「家族に、夜の歯ぎしりの音を指摘された」
こうしたお悩みの背景に、歯ぎしりや食いしばりが隠れていることがあります。どちらもご本人が気づきにくい癖のため、歯や詰め物・被せ物に負担が積み重なってから、はじめて意識される方も少なくありません。「歯医者に行くほどではない」と後回しにされやすい症状でもあります。
この記事では、春日・後楽園の歯医者である後楽園春日たなべ歯科が、歯ぎしり・食いしばりのサインと、当院で行っている対策をご説明します。
歯ぎしり・食いしばりとは?
歯ぎしり・食いしばりとは、上下の歯に必要以上の力をかけてしまう癖の総称です。眠っている間に歯をこすり合わせたり、強くかみしめたりするものと、起きている間に上下の歯を当て続けるものがあります。
起きている間の癖は、強い力でかみしめていなくても、上下の歯が軽く触れた状態が長く続くだけで負担になります。これは「TCH(Tooth Contacting Habit:上下歯列接触癖)」と呼ばれています。
上下の歯は、本来は離れている
日本歯科医師会の解説では、上下の歯が接触しているのは1日のうち10〜12分程度とされています。食事や会話で一瞬触れる時間を合わせても、その程度です。
唇を閉じていても、上下の歯の間にはわずかなすき間があるのが本来の状態です。パソコン作業や考えごとの最中に、気づくと奥歯が触れている。そうした時間が積み重なると、歯やあごの筋肉には想像以上の負担がかかります。
当院のある春日・後楽園周辺はオフィスの多いエリアです。デスクワークの時間が長い方ほど、日中の食いしばりに気づく機会は少ないかもしれません。
歯ぎしり・食いしばりが続くと、どうなるのか
上下の歯にかかる力は、どこかで受け止められなければなりません。歯が受け止めるのか、詰め物・被せ物か、あごの関節か、筋肉か。どこに負担が出るかは、人によって違います。
歯に出る
- 歯のひび(クラック)・欠け
歯の表面のエナメル質に細いひびが入り、少しずつ広がっていくことがあります。進むと、冷たいものがしみる、咬んだときに痛むといった症状につながります。 - 歯の根が割れる(歯根破折)
神経を取った歯は、強い力が加わり続けると根まで割れてしまうことがあります。根が割れると、歯を残すことが難しくなる場合があります。 - 詰め物・被せ物が外れる、割れる
治療した歯に繰り返し強い力がかかると、詰め物や被せ物が外れたり、割れたりすることがあります。セラミックなどの材料でも、力の加わり方によっては割れることがあります。 - しみる
すり減りや歯ぐきの境目のえぐれによって、歯の内側の層が出てくると、冷たいものがしみやすくなることがあります。 - 歯を支える骨への負担
歯周病で歯を支える骨が弱っている場合、強い力が加わり続けることで、歯への負担がさらに大きくなります。
歯根破折と、詰め物・被せ物が外れる原因については、それぞれ別の記事で詳しくご説明しています。
▶ その奥歯、割れているかもしれません|歯根破折が起こりやすい5つの条件
▶ 詰め物・被せ物が外れる本当の理由|4つの原因からご説明します
あごに出る
- あごの痛み・口の開けにくさ
あごの関節やその周りの筋肉に負担がかかり続けると、あごが痛む、口を開けるとカクカク音がする、口が開けにくいといった症状の要因のひとつになると考えられています。
からだに出る
- 肩こり・首こり・頭痛
物を咬む筋肉は、頬だけでなく、こめかみのあたりにも広がっています。食いしばりで筋肉がこわばった状態が続くと、こめかみの重い痛みや、首・肩のこりとして感じられることがあると言われています。
ただし、肩こりや頭痛の原因はさまざまで、歯ぎしり・食いしばりだけが原因とは限りません。首や肩のこりが続く場合は整形外科、頭痛が続く場合や強い場合は内科や脳神経内科など、医科の受診もご検討ください。
ご自身では気づきにくい理由
眠っている間の歯ぎしりは、当然ご本人には聞こえません。日中の食いしばりも、集中しているときほど無意識に起こります。
そのため「自分はしていない」と思っていても、お口の中には力の痕跡が残っていることがあります。歯が割れた、詰め物が外れたといった結果が出てから、はじめて癖に気づく方も少なくありません。だからこそ、その手前でお口の中に残るサインから見つけることに意味があります。
お口の中に残る5つのサイン
- 歯のすり減り・欠け
歯の先が平らにすり減っている、歯のふちが欠けている。表面に細いひびが入っていることもあります。 - 頬や舌に残る歯の跡
頬の内側に白い線が入っている、舌のふちに歯の形の跡がついている。上下の歯を押し当てている時間が長い方に見られます。 - あごの骨の盛り上がり
下あごの内側や上あごの中央に、骨がこぶのように盛り上がっている。ペンを長く握る指に「ペンだこ」ができるように、強い力が加わり続けることとの関係が指摘されています。 - 歯ぐきの境目のえぐれ・下がり
歯と歯ぐきの境目が、くさび状にえぐれたように見える。歯みがきの仕方やかみ合わせの力など、複数の要因が重なって起こると考えられています。 - 詰め物・被せ物のトラブルが続く
外れる、割れるといったトラブルが、同じ歯や同じ側で繰り返し起きている。
このほか、お顔の輪郭も診察のときに確認しているポイントです。エラの角が張っている方は、咬む筋肉が骨に付着する面も大きく、歯に強い力がかかりやすいと考えられます。
どのサインも、先にご説明した「歯に出る」「あごに出る」負担が、目に見える形で残ったものです。症状として困る前の段階で見つけられれば、対策を早く始められます。
「歯は咬むことが仕事」だからこそ
院長の田邉は、患者さんに「歯は咬むことが仕事です」とお伝えしています。咬ませないように大事にしまっておくのでは、歯を残す意味がありません。
ただし、仕事には適切な時間があります。食事のときにしっかり咬み、それ以外の時間は休ませる。歯ぎしり・食いしばりは、この休む時間を削ってしまう癖です。
当院で行う確認の流れ
後楽園春日たなべ歯科では、口腔内写真を撮影し、画面で一緒に見ながらご説明しています。すり減りや頬の跡は、ご自身の歯を写真で見ていただくと、はじめて実感される方が多いサインです。
そのうえで、過去の詰め物・被せ物のトラブルや、朝のあごの疲れなどを伺い、対策を一緒に考えます。
当院は担当歯科衛生士制をとっており、定期検診のたびに同じ衛生士がお口の中を記録しています。「過去に戻って写真を撮ることはできない」からこそ、今の状態を残しておくことに意味があります。すり減りが進んでいないか、新しい欠けがないかを、前回の記録と比べて確認します。
歯ぎしり・食いしばりは、一度の診察で終わる話ではありません。定期的に通っていただく歯医者だからこそ、少しずつの変化に気づくことができます。
夜の対策:ナイトガード
ナイトガードとは、眠っている間に上下の歯の間に装着する、歯を覆う形のマウスピースです。歯ぎしりや食いしばりそのものを止める装置ではなく、かかる力から歯や詰め物・被せ物を守ることを目的としています。
当院では、診察の結果必要と判断した場合に、保険診療でナイトガードを作製しています。お口の型を取り、後日お渡しします。
ナイトガードは、作って終わりではありません。お渡しの際にかみ合わせを確認して調整し、その後も定期検診のたびに状態を確かめます。合っていないナイトガードを使い続けると、かえってあごや歯に負担がかかるため、調整が大切です。
- 使いはじめ
装着時に違和感があったり、唾液が増えたりすることがあります。多くの場合は使ううちに慣れていきますが、痛みやあごの違和感が続く場合はご相談ください。 - 使い続けると
ナイトガードの表面は歯ぎしりの力で削れていきます。削れてきたら調整が必要になるため、定期検診の際にお持ちください。 - 使う時間
お伝えした時間を超えて長時間使い続けると、かみ合わせが変化する可能性があります。使い方は指示に沿ってください。 - お手入れ
歯みがき粉は使わないでください。研磨剤で表面に細かい傷がつき、汚れが付きやすくなります。中性洗剤かマウスピース用の洗浄剤で洗い、使わないときは必ずケースに戻して保管してください。
昼の対策:食いしばりに気づく工夫
日中の食いしばり(TCH)は、「気づいたら歯を離す」ことの積み重ねで減らしていくものです。当院では、次の2つをお勧めしています。
- 目につく場所にシールを貼る
パソコンのモニターやスマートフォン、デスクまわりなど、1日に何度も目に入る場所にシールを貼ります。シールが目に入るたびに、上下の歯が触れていないかを確かめ、触れていたら力を抜いて歯を離します。 - 頬の筋肉のマッサージ
食いしばりが続くと、頬の咬む筋肉がこわばります。手のひらの付け根(掌底)を頬に当て、筋肉の束を転がすように前後に動かしてほぐしてください。
どちらも、癖そのものに気づくための工夫です。お一人おひとりの生活に合わせて、無理なく続けられる方法を一緒に考えます。後楽園駅・春日駅周辺にお勤めの方も、お仕事帰りの定期検診の際にご相談いただけます。
まとめ
歯ぎしり・食いしばりは、ご本人が気づきにくい一方で、歯のひびや破折、詰め物・被せ物のトラブル、あごの痛み、肩こりや頭痛といった形で表に出てくることがある癖です。夜はナイトガードで力から歯を守り、昼はシールやマッサージで癖に気づく。この両方を組み合わせて、歯を長く使い続けることを目指します。
「朝、あごが疲れる」「治した歯がまた欠けた」という方は、春日駅・後楽園駅の歯医者、後楽園春日たなべ歯科にご相談ください。定期検診の際にも、お気軽にお声がけいただけます。